ハープ音楽は患者や看護師を癒す

NURSEZONE.com
2007/01/15

デブラ・ウッド(認定看護師)

音楽は魂を癒す、とよく言われていますが、ハープで奏でられる音楽がストレスを和らげ治療の助けとなることが看護師や医療従事者の間でわかり始めています。

「ハーピストのアリックスさんがそこにいる時、病棟に平穏な空気が広がるのです」と述べたのは認定看護師のリン・エモンドさんです。彼女はニュージャージー州のモリスタウン記念病院の心臓及びPACU(麻酔後の治療病棟)の正看護師です。

エモンドさんは音楽の癒しの特性については以前から知っていました。それで、当病院の心臓総合内科のコーディネーターであるエミリ・ロワンさんの「回復病棟でハープを演奏してもらう」という提案を取り入れました。そしてエモンドさんは、音楽が患者やスタッフに与える影響を測るために調査研究の実施を病院に要請しました。看護師たちは音楽開始の1時間前から終了後2時間までのデータを集め始め、今なおその調査は進行中です。

「私がこれを提案した時にはもっとも冷ややかに見ていたスタッフでさえも、今は演奏を楽しみにしています。否定的なコメントは聞いていません」とエモンドさんは語っています。

ハーピストのアリックス・ワイズさんは、モリスタウン記念病院の麻酔後の治療病棟で1週間に5日、1日に2時間を2回に分けてハープを奏で、更に週に1度は夜勤看護師の求めに応じて、夕刻にも演奏しています。彼女が選ぶのはなじみのない曲、不快な記憶や感情を引き出すことのない音楽です。

患者が自分の置かれた環境を理解し、音楽によって不安が随分取り除くことができれば、とエモンドさんは期待しています。一方で、調査研究の結果を心待ちにしてもいます。というのも、その調査によって、外見上は意識のない患者でさえもその音楽を聞いていて、潜在意識下で何らかの反応を示す可能性があることが明らかになるかもしれないからです。

言葉ではどうしても落ち着かせられない興奮した患者のベッドサイドに、看護師たちがハーピストのワイズさんを呼んだことがあります。その時、音楽はこのような患者の心を和らげるのに役立つ、というはっきりした効果がみられたのです。

「ベッドサイドの音楽は患者の意識をはっきりさせ、気分を高めるのにとても有益です。音楽は、患者の置かれた環境に、これほどの癒しと力強い平安や慰めをもたらしてくれるものなのです」とエモンドさんは語りました。

更に、ワイズさんが演奏している時、看護師たちはいつも以上に柔和に話しているように思われます。彼女が思うに、音楽には人を落ち着かせる作用があり、それを聞くことにより、人を侮辱したり邪魔をしたり、ということをしたくない気持ちになるのでしょう。

ヒーリングアートのコーディネーターであるヴァレリー・キャンポスさんは、フロリダのオーランド地域医療センターのPACUや救急病棟、透析病棟、化学療法室、普通病棟や廊下などで、週に5日フルタイムでハープを弾いています。患者の感情的な反応を引き起こすのを避けるために、クラシックとヒーリング音楽の間にあるような曲を演奏し、スタッフや患者から好意的な反応を得ています。

キャンポスさんは時々、夜に集中治療室で演奏するのですが、「患者さんたちはこの音楽を気に入ってくれますし、患者さんが昏睡状態にある時はその家族が喜んでくれます。その音楽は彼らをベッドの上で落ち着かせるのに役立っているのです」と言っています。

彼女が演奏すると、そのハープの振動は廊下中に伝わり、そこに静かな安らぎがもたらされます。

キャンポスさんはまた、「スタッフは気分がよくなり、より良い看護ができるのです。彼らは落ち着き、ストレスも減って、患者が感じるのと同じぐらい、落ち着いた気分になるのです」とも語りました。

ある患者の息子さんが、キャンポスさんが演奏したその夜だけは子供が眠ってくれた、と言っていました。2002年にオーランド地域医療センターで行われた小規模の調査によれば、胸部心臓血管外科に入院している手術後の患者たちが20分間のハープ演奏を聞いた後では、痛みや不安が緩和され、呼吸や脈拍、血圧、酸素濃度などの数値も安定したということがわかりました。

イリノイ洲アーバナのカール心臓センターの医学博士であるアブラハム・コチェリル医師もまた調査研究を行いましたが、ハープで奏でられたクラシック音楽は、電気生理学の研究のために鎮静剤を投与された患者の心拍数を安定させ得るという結果が出ました。

「驚くべきことは、私たちがその効果を実際に目のあたりにしていること、そして、どの患者にも一定した効果があるということです」とコチェリル博士は述べました。

博士はまた、ハープ音楽を聞いた後は心拍数が90から60へと劇的に下がり、迷走神経の鎮静がみられ、異所性心房拍動が減少した、ということにも気づきました。模擬ストレスを用いた研究では、患者がストレスを感じる前に音楽を聞けば、病んでいた心臓がストレス状況下で正常に動くということも判明しました。

「無意識の状態で音楽を聞いている患者にさえも、かなりの効果があることが分かっています。どの患者に対しても一定して繰り返し認められる効果です」と博士は語っています。

(KN 訳)

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