ハープ・セラピーとは

ハープ・セラピーは、音楽を療法的に用いるものですが、欧米や日本で一般に行われている“音楽療法”とは趣旨も方法も異なります。

従来の“音楽療法”のスタイルには、大雑把に言って、患者さんが音楽活動に参加するものと、既成の音楽を聴くことによって効果を得ようとするものがあり、そのほか、近頃よく見られる病院内コンサートを音楽療法とみなす場合もあるでしょう。

ハープ・セラピーは、上記のどれでもありません。

セッションの様子

ハープ・セラピーの3つの特徴 ♪

1 対象は常に「ひとり」の患者さん

ひとりの患者さんの呼吸や脈拍、体の動き、顔の表情、環境などを考慮に入れて、リアルタイムで音楽を奏でていきます。そのため、一度に複数の患者さんを対象とすることができません。コンサートのようなプログラムははじめから存在せず、同じ人を対象としていても、毎回異なる音楽が生まれます。セッションの時間もそのときどきによって違いますが、1 回 30 分ほどから最長 60 分のセッションのあいだじゅう、音が途切れることはありません。

2 患者さんはそこにいるだけ=「音浴」

患者さんは音楽に耳を傾ける必要がなく、眠ってしまってもかまいません。患者さんの能動的な参加を一切求めないので、看取りのケアや、昏睡状態、寝たきりなど重症の方に最も適しています。「日光浴」で日光を見つめる必要がないのと同じように、「音浴」では、音を聞こうとしなくても、その波動は体全体の細胞を通して伝わります。真剣に聴くよりも、ゆったりと音楽を浴びているだけのほうがむしろ効果的で、この意味で音楽療法より‘音響’療法に近いかもしれません。患者さんはただそこにいればいいだけなので、最近では、外科手術室、新生児室、集中治療室、未熟児・障害児室、透析室、リハビリセンターなどでも役立てられています。

3 知らない曲が中心

ハープ・セラピーでは、ほとんど誰も知らない音楽を、そのときのその人にふさわしいテンポやリズムで奏でるのが基本です。使う音階(モード)もその場で選び、状況に合わせて変えていきます。素朴な即興演奏やグレゴリオ聖歌など、聴き手に予測できない音楽、歌詞のない曲を使うのは、「意識=脳」による解釈をかわして「無意識=体」に働きかけるためです。「聴く」という行為からも患者さんを解放し、言葉や記憶を超えた領域で、音と音楽の力に心身をゆだねることをめざしています。よく知られている曲を演奏するのは、セッション導入時や、認知症・昏睡状態の患者さんの現実感覚を呼び戻したい時など、相応の目的がある場合に限られます。


“音楽療法”とは「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」。

(日本音楽療法学会による定義)

”音楽療法”は、行動や機能に何らかの改善をもたらすことを目的とした行動科学の一分野であり、音楽を用いて改善や変容をめざすという方向性がこの定義でもはっきり示されています。

ハープ・セラピー