ハープ・セラピーの背景

ハープ・セラピーの先進国アメリカでは、医療機関に拠点を置いた養成講座が今では20近くあります。講座を修了した人の数は千人をゆうに超え、緩和ケア病棟やホスピスなど医療・介護施設でのハープ・セラピーの正式採用も増えてきました。また、2005年にダブリンで開かれた「国際ハープ会議」でのハープ・セラピーの特別セミナーをはじめ、2007年のシドニーにおける「医療と音楽シンポジウム」では緩和ケアの一環としてハープ・セラピーの意義がクローズアップされるなど、世界各国でも大きな広がりを見せています。

活動が盛んになるにつれて、従来の「音楽療法・音楽療法士 Music Therapy/Music Therapist」との明確な線引きが必要になり、2005年には「全米基準理事会」によって、この活動の正式名称を「療法音楽・療法音楽士 Therapeutic Music/Therapeutic Musician」とすることが定められました。

私たちは、日本でこの活動を広めるにあたり、従来の“音楽療法”との用語上の混乱を避けるために、また、私たちの文化に根差したものに育てていく意図を持って、改めて日本語としての「ハープ・セラピー」という名称を採用しました。(「ハープ・セラピー」は当協会の登録商標です。)

「音楽そのものにセラピーとしての効果がある」という見方や、「ハープという“癒しの楽器”による音楽はすべてセラピーである」という考えを決して否定するものではありませんが、私たちの「ハープ・セラピー」は、

1:ひとりだけの患者さんが対象

2:患者さん側の活動を一切要求しない

3:その人のための音楽をリアルタイムで即興演奏

という3つの特徴を備えた活動を指しています。これはまた、世界で通用する「ハープ・セラピー」の定義でもあります。

全米基準理事会の定める「療法音楽」は使用楽器をハープに限定しておらず、ほかの楽器や声を用いて活動している人も少なくありません。また特に最近は、活動の場所やセッションの形態もずいぶん多様になってきました。けれども、歴史的な意味でも、実際にも、この活動に小型のハープが最も多く用いられることに変わりはなく、そのため、今も一般には「ハープ・セラピー」と呼ばれています。1996年に発刊された「ハープ・セラピー・ジャーナル」という機関紙も、同名を維持したままで「療法音楽」の学びと情報交換の場として、現在も購読者数を増やしています。

ハープ・セラピー