「癒しのハープ」

セラピー・タイムズ
2008/1/17

バーバラ・ローズ・ビリングスさんがその人生で求めてきたのは、人に喜びや癒しをもたらすことでした。その人生の旅が、カトリックの修道院を出て、カリフォルニア州グリーンブリーにあるマリーン総合病院での「癒しのハープ」へと彼女を導いてきました。今、最高に満足している、と彼女は言っています。

ビリングスさんは病院で週に2日、病気の人や動揺している人、痛みのある人を落ち着かせるためにポータブルのハープを演奏しています。 “彼女の音楽には癒しの効果があります、そして、それにはとても深い意味があります”と言うのは、病院付属の「健康と癒しの研究所」のスージー・ローレンソン・シプリー所長です。“私たちは自分の目の前で変化が起きるのを経験します。患者さんの不安が和らぐとか、血圧が下がっていくといった変化です”と、ビリングスさんが言います。

ハープ音楽は、マッサージ療法や誘導イメージ療法、芸術療法など、従来の医療に加えて病院が提供するようになった様々な療法のひとつです。このプログラムは1987年に始まり、2000年にはサンフランシスコを拠点とするカリフォルニア太平洋メディカルセンターと提携して、病院の内外で様々なサービスを提供しています。

ビリングスさんにとって、ハープを演奏することは子供の頃の夢をかなえてくれるものです。“ハープの音楽はいつも私を別世界につれていってくれました。聞くたびに癒されたものです。”

1999年のクリスマスに、夫のチャールズさんが彼女にハープ・レッスンをプレゼントしてくれました。ビリングスさんは、カリフォルニア州ミルバレーでジョージア・ケリーに師事してバッハやベートーベンなどを、そして同州のナヴァホではベッツィーナ・ミッチェルの下で、ほかのいろいろなレパートリーを学びました。

“私は癒しの音楽を学びたかったんです。”
2005年、ビリングスさんはソルトレイクシティでのハープワークショップに参加し、そこで、病院でハープを演奏する人を養成する講座がアメリカ全土に10以上もあることを知りました。彼女はペンシルバニア州ベンサレムの教育機関が提供する「ベッドサイド・ハープ」講座を選択し、2年間の研修を受けました。

それまではペダル付きの大きなハープでレッスンを受けていたのですが、その時からウェストオーバー社のエイデンというモデルを弾くようになりました。19弦で7ポンド(約3.2kg)の小さいポータブル・ハープで、膝の上に載せて弾きます。弾く音楽も変わりました。もはや譜面からではなく、耳で聞いて即興で演奏することを学びました。ビリングさんによると、“音楽は別の場所からやってくるのです。”

ベッドサイド・ハープの認定を受けるためには120時間の実習が必要です。ビリングスさんはシプリー所長にアプローチしました。シプリー所長もずいぶん前から、病院で音楽療法を提供したいと望んでいました。120時間の実習を終えたビリングスさんは、さらにもう120時間の実習を行って、ハープセラピーの修士号を取得しました。今や彼女は、病院で「癒しのハープ」のクラスを持ち、ほかの人を教えています。

シプリー所長は、“「癒しのハーピスト」になるには300時間の研修を受けなければなりません。病院は緊張感のある厳しい場所ですから、よい仕事をするための十分な資格が必要です”と述べています。ビリングスさんは、ナースステーションで、待合室で、乳児用ICUで、また、化学療法を受けているがん患者にハープを弾きます。そしてほかの誰でも、彼女の姿を認めて呼び止めてくれた人にハープを弾きます。

最近のある朝、96歳のエレナさんのためにグレゴリオ聖歌やアイルランドの子守唄、そして“オーラ・リー”(ラブ・ミー・テンダーとして知られている曲)を演奏すると、エレナさんの顔に微笑みと安らぎが浮かびました。外で看護師さんたちが慌ただしく動き回っているにもかかわらず、部屋の中の雰囲気は静かで落ち着いていました。“美しいわ。まるで喜びが空中に漂っているよう”とエレナさんは言いました。

看護助手のサワンティ・ケスラーさんも、“ハープの音楽を聞くと、患者さんは痛みを忘れて、心が活性化されるんです“と、言っています。

マリーン総合病院神経科医のリチャード・メンディウスさんが言うには、ビリングスさんの演奏はナースステーション全体のトーンをがらっと変えてしまいます。彼は個人的にもビリングさんの音楽を高く評価しています。というのも、演奏を聴いたあとは自分も気が休まると感じるからです。

ビリングスさんは、これこそが人生が彼女に求めている仕事だと感じています。人を癒す、という使命です。彼女は18歳から29年もの間、カリフォルニア州バーリンガムにあるマーシー修道会に所属していました。のちにライム病と診断された病気にかかって治療を受け、いくつものヒーリング・セラピーを経験しました。そして、今度は自分が人を癒す立場に立つために一年間の休暇を取り、その後、催眠療法で博士号を取得することができました。

修道会を去ろうと決めたときには、“すべてのことが「癒しのハープ」の方向を指し示して”いました。かつてはハープを演奏することに自意識を掻き立てられていたのですが、今ではそういった自分の感情を乗り越えることを学びました。“私のことではないのです。音楽と、それを聞いて癒される人のことが大事なのです。これ以上のやりがいはありません“と、ビリングスさんは語っています。

(出典:ベス・アスリー/マリーン・インディペンダント・ジャーナル)

(HA 訳)

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