ハープ音楽は
喧噪に満ちた病院環境に平安をもたらす

ミシガン大学メディカル・センター
2008/10/14

ジュリー・ハザールさんが訪れる病院で彼女のハープ音楽がもたらす影響は、演奏が始まる前でも感じられるほどです。人々は振り返って目を輝かせ、他の階のスタッフが次は彼女がいつ来るのかと尋ねます。

ひとたび初めの和音が奏でられると、時間がゆっくり過ぎて行くようです。皆が声をひそめ、動きは優しくなります。患者も見舞客も、まるでよい香りを楽しむように目を閉じるのがよく見られます。

ハザールさんは、「私が病室に入ったとき、患者は心を閉ざしているように見えることがあります」と、肩をすぼめて筋肉を緊張させた格好をまねながら言いました。「そして、演奏するにつれて彼らが解放されていくのがわかります。ストレスの度合いが下がっていくのが感じられるのです」

ハザールさんは“The Gifts of Art Bedside Music Program”(ベッドサイドの音楽プログラム「芸術の贈り物」)の一員として、火曜と水曜に病院で演奏しています。彼女は新生児集中治療室や精神疾患集中治療室、手術前室、精神的外傷室のような場所や、5〜7階のいくつかの病室を訪れます。担当看護師からの情報や、患者の状態を観察することで手がかりをつかみ、個室の患者のためにしばらく演奏したり、集中治療室全体に向けてBGM(バック・グラウンド・ミュージック)を提供したりしています。

ハザールさんは、音楽家のための国家教育資格である“癒しと移行のための音楽プログラム”で、実践者としての訓練を受けました。「忘れてはいけないのは、これは音楽療法ではなく“療法音楽”だということです」

「我々は音楽療法士ではありません。ただベッドサイドで音楽を提供するだけです。何よりも患者さんとご家族やスタッフに、ベッドサイドでのストレスを軽減するものとしての音楽を提供するのです」とハザールさんは説明します。

病院のスタッフたちも、“芸術の贈り物”のディレクターであるエレーヌ・シムズさんに対する敬意とともに、ハザールさんに同意を示しています。動揺していた患者がたちまちリラックスした例をはじめ、いろいろな賞讃や感謝の言葉が数多く聞かれます。

「今日、私はなだめるのも難しい一人の子供を担当していました。しかし、ハープの音楽が奏でられている間中、彼女は安らかでリラックスしていました」と、ホールデン新生児集中治療室のデブラ・デービス看護師が書いています。

スタッフに対する影響については、「赤ちゃんのようにあやしてもらう、という言い方が最も適当です」と、新生児集中治療室社会福祉士のジャネット・アレンが語りました。「スタッフはいつも楽しみにしていて、“ハープ・レディ”が次はいつ来るのかと尋ねるのです」とアレンは言います。「ジュリー・ハザールさんは、装置や備品でいっぱいの病室に静けさのひとときをもたらすことさえできるのです」

提供する音楽の影響を最大にするために、ハザールさんは患者の感情や身体的反応を見ながら、その状況に合わせてハープを奏でます。フォーク、ケルト音楽、クラシック、そして、希望があれば讃美歌、ミュージカル・ショーの音楽など、レパートリーはたくさんありますが、それに加えて、彼女が“漂うような音楽”と呼ぶニューエイジ・ミュージックもよく使います。「ニューエイジの音楽は決まったリズムがありません。頭の中でいつまでもメロディーが鳴るようなことがなくて、そのほうが楽だという患者さんもいます」と、ハザールさんは説明しています。

患者に意識があって、注意力もあり、比較的気分がよさそうであれば、ハザールさんは、何が聞きたいかを患者に尋ねます。しかし、苦痛のさなかにあるとか、意識混濁状態などの患者には、“漂う音楽”のような、知られていない曲を弾いてみます。「メロディーをたどりながら聴く、ということをしないほうが、患者さんはより解放され、音楽に身を委ねやすくなります」

「録音された音楽に比べて、生の音楽はもっと多くのものを与えることができます」と言いながら、ハザールさんは、音の振動は実際に体感しうることを示すために、大きなハープの長い弦 - 低い音域の弦 - を爪弾きました。

「録音された音楽が無用だと言っているわけではありません。ただ、いつも同じ速さで、何の変化もなく、決まりきっています」「私は患者さんの心臓の拍動や呼吸、感情の動きを通して、患者さんがリードする音楽を奏でることができます」

ミシガン大学病院健康センターは、そこを訪れる人々に多くのサービスを提供していますが、そのうちのひとつであるハープ音楽は、手術を控えた患者や、気分をなだめる音を必要としているスタッフや、面会に来た家族など、その誰に対しても用いられるサービスです。

ジャネット・アレンは語っています。「ちょうど昨日、私はアッパー・ペニンシュラ(ミシガン州北部)から来たある家族と会って、ロナルド・マクドナルド・ハウスなど、利用可能なサービスのすべてについて説明していました。まさに説明を終えようとしたその時、ジュリーがハープを台車に乗せてそこへ入ってきたのです。たった今私が話したことに付け加えるような形で、これからハープを弾こうとしている人が出てきたので彼らも驚いていました。この病院ではここまで患者さんのケアをしているんだと、大変感動していました」

“ベッドサイドの音楽プログラム”へのお問い合わせは「芸術の贈り物」係まで。

(YO 訳)

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