病院における“特別ケア”としてのハープの人気

Camberra Times(キャンベラ・タイムズ)
ルイーズ・アンドリュース
2010/04/04

アリソン・ウェアーさんが癒しのハープを演奏する間、フランク・リグビー氏はずっと目を閉じていました。アイルランド民謡「High Germany」の最後の小節が消え入るように終わり、病院内設備の継続的なビープ音が取って代わると、82歳のリグビー氏は再び目を開けました。

キャンベラ病院ではこのような光景がますます頻繁に見られるようになっています。ウェアーさんがここにやって来たのも、この珍しいセラピーを提供するためです。

ウェアーさんはハープのもつ癒しの力を発揮する療法音楽士であり、アメリカ音楽死生学トレーニングセンターの「癒しの聖杯」プログラムで、瞑想音楽の資格を取得しました。

彼女は重病患者や腎臓の病気で入院しているリグビーさんのような患者に対し、週1回、ボランティアでハープを演奏しています。

「本当に心が安らぎます。眠りに落ちてしまうくらいです」と、入院患者のブルースさんは言っています。「演奏してくれる、このタイプの音楽はとても私に合っていて、まさに私に必要なものです」

ハープは長い間、特別な癒しの特性を持った楽器だと考えられてきました。
ハープの広い音域と音色は不安を軽減し、記憶を刺激し、落ち着いた環境を作り出す効果があるとみなされています。死にゆく人のベッドサイドで演奏してほしいとしばしば頼まれるウェアーさんは、この経験を「非常に神聖な時間」と言い表しています。

彼女は、「ハープによる療法音楽は3つの音、”陽気、悲しみ、まどろみ”に基づいています。これは癒しの楽器の原型なのです」と説明します。

彼女はほとんどの時間を、緩和ケアが必要な患者やがん患者と過ごしていますが、同様に、その才能は小児科と産科病棟でも求められています。

彼女は木曜日に最大5〜6名の患者の許を訪れます。またある日は、がん病棟ラウンジに向かう広間で、行き交う人々へ演奏したりもします。

ある日、彼女が患者のために行っていた演奏がリグビー氏の耳を捉えました。彼はその音楽について職員に尋ね、それでウェアーさんが彼のために演奏することになったのです。

「まるで劇場に座ってオーケストラの演奏を聴いているようです」 とリグビー氏は言います。
「オーケストラの中ではハープがいちばん好きだったんです」とも。

ハープを用いた療法音楽を実践するには、医療分野での研修が必要であるのと同時に、特別な音楽的アプローチを必要とします。「演奏技術も身につけなければなりません。ちょうど両極端のことが両方求められているのです」 とウェアーさんは言います。

「病気のときは、複雑なリズムは演奏したくないものです」
リグビー氏に対しては「High Germany」をほとんど即興で演奏する、というように、患者さんの気分に合わせて音楽を調整することも重要です。

「私たちはいつも患者さんを見ています。演奏する音楽を、患者さんが望むものに変えているのです」とウェアーさんは言います。

(HA 訳)

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